米国で最も出版されている料理本の1つに「The Joy of Cooking」という本があります。1931年、セントルイスの主婦であるイルマ・ロンバウアー(1877-1962)によって制作され、以来継続的に1800万部以上を販売、中でも1975年版(9版)は特に多く売れ、全盛期を迎えました。
その後、時代に遅れたレシピとインターネットの発達に伴い忘れ去られていましたが、2019年に作者のひ孫にあたるジョンベッカー(John Becker)とその妻のメガンスコット(Megan Scott)によって改訂9版が販売され、話題になりました。
600以上の新しいレシピを加えただけでなく、4,000以上の定番レシピに現在にあった食材や調理法を取り入れ、今風にアップデートするなど大幅に改善しています。
そこで今日はどのような面で改良されたのかを比べながら、アメリカの食がどのように変化して行ったのか見ていきたいと思います。
多様化する個人のライフスタイル
ベジタリアンやビーガン、グルテンフリーなどライフスタイルの多様化が進む中、そういった様々なニーズに合わせ料理のスタイルも細分化されています。今回の改正版は、それらに対応した様々な料理が豊富に含まれています。
健康志向の高まりと食の安全性
健康志向がより高まると同時に食の安全性への興味も大きくなり、深い食の知識を求める傾向にあります。そのためレシピとは別に簡単な栄養学から食品の安全性、賢い食品の選択方法、1日の食品摂取量、食品ラベルの読み方など、健康でいるため知っておきたい必要事項がいろいろと説明されています。またコンブチャや塩レモンなどの発酵調味料や料理、蒸し料理、全粒粉を使った料理、豆腐やテンペなどの大豆料理、レンズ豆やヒヨコ豆を使った豆料理などがとても充実しています。
より多忙なライフスタイル、合理化する調理法
仕事やソーシャルライフが忙しく、料理をする時間がないが家庭で美味しい料理を作りたいという人々が増える中、圧力鍋やスロークッカーを使った料理、作り置きレシピなど合理化した調理法が色々と紹介されています。
こだわりを追求できる料理
1つの調理法を追求しマスターしたいというこだわり派に向け、低温でのソース調理、発酵、バーベキュー、スモーク料理など、人気の高まる調理法の説明やレシピが多く追加されました。
よりエキサイティングな味の追求
国際的な料理やエスニックなフレーバーなど、若い世代は益々新しい刺激的な味を求めています。そのため改正版には、ビビンバやビーフレンダンからザタール(中東のスパイスミックス)まで、世界中で人気のあるエスニック料理や世界の調味料を使った国際的なレシピを含むことに力を注いでいます。例として、アメリカ定番のサンドイッチのカテゴリーには、タコスやフラットブレッドなど、サンドイッチに代わる人気のチョイスをたくさん追加しています。
ざっとこんな感じですが、いかがでしたか?なんとなく食の時代の変化が感じられたのではと思います。消えつつあったアメリカのバイブル的料理本の復活、以前より競争相手も多いこの時代でどのような位置付けになっていくのか今後が楽しみです。
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